【 構造体を使って再生するリノベーション 】

構造体を使って再生するリノベーション 外観写真1

1.「解体して新築? それともリフォーム?」

中古住宅を購入してお住まいになっていたO様。家族の成長とともに、間取りが生活スタイルに合わないと感じるようになりました。また自宅の一室でお仕事をされていますが、独立した事務所スペースも欲しいとお考えです。「解体して建て替えるにはもったいないけれど、リフォームだと思うような家になりそうもないし…」というお悩みを抱えていらっしゃいました。

新築かリフォームかの判断に悩む方は実に多いです。これを見極めるには、次の3つの点に着目するとよいでしょう。

[1] 基礎の沈下が著しい、あるいは鉄筋が入っていない。地震に弱い。
家の構造体が変形していたり腐ったりしていると、リフォームしても耐用年数が短いため、せっかくお金をかけても費用対効果が低くなってしまいます。

[2] とにかく寒い。土台や柱が腐っている。壁内結露がひどくカビの匂いがする。
とにかく寒いと感じる家の場合、断熱性能をアップさせるのに相当額を投じる必要があります。またこのような家は結露もひどく、木材の腐朽が進んでいることも多いです。

[3] 建物規模・間取りが、明らかに生活スタイルに合っておらず、ストレスを抱えながら暮らしている。
生活スタイルと間取りが合わないということは、我慢しながら暮らしているということです。「ゆっくり休む、くつろぐ」といった、住宅に求められる大切な要素が欠けていることになります。

構造体を使って再生するリノベーション 外観写真before1

さてこちらのO様邸は、構造体は大丈夫で、結露が少なく木材は概ね健全な状態でした。間取りについては、柱や梁を追加すれば変更が可能であり、さらに耐震性能を上げて地震に強い住宅にすることも可能です。工事金額も「解体+新築」より800万円ほど安くなると試算し、総合的に判断してリフォームで進めることになりました。

構造体を使って再生するリノベーション 外観写真2

リフォーム後の外観です。無落雪屋根、ビルトインガレージ、独立した玄関を持つ事務所スペースなど、O様の希望を叶えた家に生まれ変わりました。「新築」と言っても気付かない仕上りの「リノベーション」です。

2.リフォーム可能かを判断する、専門的なチェック項目

建物がリフォーム可能かどうかを判断するために、設計事務所が専門的な観点から行う主なチェック項目を解説します。

構造体を使って再生するリノベーション 外観写真before2

[A] 外観 ※外部から雨が内部に入り込んでいないか?
・外壁材の劣化、コーキングの劣化(防水性能は確保されているか)
・屋根材の劣化度(錆びていないか、雨漏りは無いか)

構造体を使って再生するリノベーション 工事写真1

[B] 床下の状況 ※木材の腐朽が無いか、基礎が健全か?
・土台、大引は腐っていないか
・断熱材の種類と施工状況、カビの存在、シロアリの被害
・基礎コンクリートは割れたり、錆が出ていないか

構造体を使って再生するリノベーション 工事写真2

[C] 天井裏の状況 ※結露、雨漏りが無いか?
・雨漏りは無いか
・断熱材の種類と施工状況、結露によるカビの存在

構造体を使って再生するリノベーション 工事写真3

[D] 部屋内部の状況 ※床・壁に著しい歪みやシミが無いか?
・床は水平か、壁は傾いていないか
・カビ臭くないか
・設備の設置、稼動状況

O様邸では、構造に係る部分に問題がないことを確認できました。結露の跡やカビは見られましたが、断熱材の交換などで健全な状態に戻せそうでした。
間取りに関しては、玄関及びカーポートの位置、子供部屋の規模、LDKの広さなど、「これからの生活にあった新しい空間構成」をご提案し、O様からの外観も一新するご要望を受けて、構造体を使って大胆に生まれ変わる【リノベーション】をすることになりました。

3.リノベーション工事の実際

構造体以外を取り払う、大掛かりな解体作業から始ったO様邸のリノベーション工事。木造の良いところは、柱・梁の追加が容易であると同時に、取り除く事も可能であることです。

構造体を使って再生するリノベーション 工事写真4

勾配型だった屋根を、無落雪型の陸屋根に架け替えるため、屋根も解体していきます。

構造体を使って再生するリノベーション 工事写真5

窓サッシも、間取り変更に伴って新しい位置に付け替えるため、取り除いていきます。

構造体を使って再生するリノベーション 工事写真7

解体が完了すると、新しく基礎や柱、梁、筋かいを追加して、現在の建築基準法に適合した耐震性能を持つ構造体を作っていきます。

構造体を使って再生するリノベーション 工事写真8

既存の家は総2階建ての四角い建物ですが、建物一体型のガレージを増築します。

構造体を使って再生するリノベーション 工事写真9

新しい柱を追加して、そこに耐震性能を高めるための「筋かい」を取りつけています。

構造体を使って再生するリノベーション 工事写真10

新しく組んだ無落雪の屋根組み。色が濃い既存の桁梁の上に、色の淡い新しい小屋組みが載っています。

構造体を使って再生するリノベーション 外観写真3

木造の特性を生かし、新しい間取りと耐震性能を獲得した家に生まれ変わりました。屋根の形や外観の色も変わって「新築?」と尋ねられそうなリノベーションの完成です。

家の想い出をそのまま生かすリフォーム 外観写真4

以前は別棟の車庫が建っていたために暗く不整形だった庭も、広くて明るい庭になりました。リビングからも庭の木々がよく見えます。

家の想い出をそのまま生かすリフォーム 外観写真5

玄関はビルトインガレージと一体型になり、大変だった玄関前の雪かき労力も軽減されました。

家の想い出をそのまま生かすリフォーム 内観写真1

玄関収納をたっぷりとった新しい玄関ホールから、ダイレクトにリビングへ入ります。以前は玄関横にあった和室をリビングと一体の空間に改造して、ピアノやソファをゆったりと置ける広々とした空間にしました。

家の想い出をそのまま生かすリフォーム 外観写真6

適切なリノベーションをすることで暮らしやすくなり、建物を活かすこともできます。ライフスタイルの変化に合わせて住まいにも手を入れて、長く心地よく住み続けることができるといいですね。

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